10月某日。
「窯炊くからくる?」とお誘いいただき、額賀円也さんの工房にお邪魔させてもらいました。
額賀さんの工房は、岐阜県の土岐市の山間にあります。
額賀さんは高校を卒業するまでは、画家のご両親のもと東京の西側で育つ。
絵を描くことが当然という環境のもと、幼少期より絵画と親しむ。
しかしながら、成長とともに、自分には絵画は向いていない、
かといってサラリーマンになることは想像できない、と思い悩むことに。
そんなとき、知り合いに瀬戸の窯業学校を勧められて、高校卒業後、陶芸の道を進むこととなった。
陶芸については、全く知らなかったが、土でものを作ることにのめり込み、陶芸家となって今年で20年となる。
ここ数年で、2機の薪窯を自作した。
ひとつは上の画像の穴窯。
もう一つは下の画像の小ぶりな登窯。
薪窯を作るまでは、ガス窯を使って、どちらかとういとカジュアルな使い勝手のよい器をメインに作っていた。この窯を持ってからは、最後は薪による火の力に任せる、自分の以外の力が作り出すものの面白さはまっている。
今回は何を持ってきてくれる予定ですか?
と尋ねたところ、「今焼いている薪窯で焼いたものだけを持っていきます」とのこと。
「刷毛目の器が一番好きなんですよ。だからいい刷毛目に出会いたくて、いつも刷毛目に力をいれて作っている。」
そういえば、前回企画展に参加していただいた際、額賀さんの刷毛目はとても好評だった。
器の縁などには石ハゼがでていたり、穴が空いていたりと、かなりワイルドな仕上がりだったけれども、とてもいい焼け色がでていて、女性にも、海外の方にも喜んでいただけたのだ。
DMの撮影をする際に、いくつか器を送ってもらったもののうち、もちろん刷毛目もあった。力強く豪快な刷毛目で、額賀さんらしさが感じられるもの。
その皿をDMの表にするか、今回採用した三島手にするか悩んだのだった。
結局三島にしたのだが、刷毛目にすればよかったかなぁ。でも今回の三島の迫力が素晴らしくて。
「土岐という、瀬戸や美濃と同じ地域で作陶しているけれども、自分はここの伝統的な焼き物ではなく、李朝をベースにしたものを作っているから、民藝を目指しているのかといわれることがあるけれども、そういうことではない。」
「器の縁や胴の微妙なラインにこだわりたくなる。どのラインがいいのか、こっちか、あっちか、そういうことに夢中になる。」
実は今回、窯に火を入れる前日に大雨が降って、穴窯がずぶ濡れになってしまい、火を入れてもなかなか温度が上がらなかった。
１日火を焚き続けたが、窯が燻るばかり。一旦火を落として、後日改めて火入れをしたそう。
薪の窯は天候に左右されることもあって、自分の力の及ばないことも多々ある。
「窯がダメだったとき、どうするんですか?」
と尋ねたら、
「二日ぐらい落ち込む」
のだそう。
自然相手に自分の力は及ばないが、自然の炎の力に頼る、それが面白い。
10月19日(土)から「額賀円也展」には、そんな額賀さんの器が並ぶ。
どんな器たちに出会えるか、ちょっとドキドキしながら待っている。
10月19日 (土)〜25日(金) 額賀円也展 (陶)
Sat, Oct 19 – Fri, Oct 25
v Enya Nukaga has a studio in Toki City, Gifu Prefecture, where he works as a ceramic artist deeply inspired by Koryo and Yi Dynasty pottery.
He uses the Mishima inlay technique to craft exquisitely carved vessels, which are fired in a traditional wood kiln.
These pieces are a beautiful blend of delicacy and boldness.
Please come and see them.
額賀円也展 (陶)
岐阜県の土岐市に工房を構える額賀さん。
高麗や李朝の焼き物に魅せられ、精緻に彫り込んだ三島手を、力強く薪窯で焼いている。
繊細かつ大胆な器たち。
是非ご高覧ください。
10月19日(土)〜25日(金)
会期中無休
営業時間 12時～18時
最終日17時まで