
田中孝太さんは佐賀県の唐津で、唐津焼を作る作家です。
ってくどい言い回しですかね。
でも、そうなのだ。
今時は、産地に工房を構えていても「○○焼」というものを作らない作家も多い。
でも、田中さんは唐津で唐津焼を作っている。
というと、特別なことのように聞こえますが、唐津という場所の作り手は、ほぼ唐津焼を作っているので、唐津では珍しくない。
ただ他の産地と比べると珍しいと言える、かもしれません。


そんな田中さんは、唐津の中でも相知という場所で「坊中窯」という名で窯を構えています。
山と緑が広がる、穏やかな気候に恵まれた場所です。
もともとは、1984年生まれで山口県出身。大学卒業後、自分の手でできることを求めて陶芸と出会い、有田の窯業学校に入り直します。その後韓国に渡り、金栄吉氏のもとで一年半ほど修行、帰国後に唐津の中川自然坊氏に師事します。2011年に中川氏が他界されたことで独立を決め、2012年に独立し、現在に至ります。
田中さんは、山から採ってきた土を使い、自作の登窯で焼く、という全て自らの手で行うというスタイル。
自作の登窯は、韓国で学んできたことと、自然坊氏のもとで学んだことを元にして、何度も失敗をくり返しながら作っている。最近2つ目の窯を作り上げ、そちらの窯でも焚いています。
田中さんは窯をガンガン焚きたいという気持ちが強い。それが、窯のコントロールを狂わせて、焼き損じがでることもあるとか。「窯とオレの戦い」が、器に仕上がっていくことの面白さを、存分に味わいながら窯を焚いているのだとか。
田中さんが作る唐津は、刷毛目や三島、粉引、絵唐津、斑唐津など、ですが、特に思い入れのあるのは朝鮮唐津。二種類の釉薬を使い、火の当たり具合で溶けて流れ混ざり合う景色を作り出すために、どのように薪をくべるか、どのように抑えていくか、田中さんの焼きに対する思い入れが強く表現できる器なのだろう。

焼きの面白さもさることながら、田中さんの作る唐津は、ゴツゴツとした土の味わいを強く残した器の表情も魅力です。その器のもつ雰囲気は、荒々しいかと思いきや、落ち着きがあり、シンとした佇まいが実によい。土の味を生かした素朴な面と、唐津の伝統が作り出す品格とが相まって、独特の世界観を感じられる器です。
今回の展示には、そんな田中さんが作った、表情のいい唐津がたくさん並びます。
ぜひ、ご高覧ください。
田中孝太
1984年 山口県生まれ
2009年 有田窯業大学卒業
韓国金栄吉氏に師事
2010年 中川自然坊氏に師事
2012年 唐津にて独立






ONE LITTLE DAYさんの作った田中さんのインタビュー動画です。