10月30日(土)から始まる「川口武亮展」を前に、佐賀、有田の川口武亮さんの工房を訪ねました。
川口さんの個展は4年ぶりとなります。
コロナ禍以前、有田の春の陶器市に出店なさっていた川口さんのブースにお邪魔することはあったのですが、工房にお邪魔するのは、久しぶりです。もしかしたら10年ぶりくらいかもしれません。
川口さんとのお付き合いは、自宅店舗時代、川口さんが営業に来てくださったのがきっかけでしたから、10年以上になります。
この間に、ずいぶんと作風が変化していくのを、とても興味深く、頼もしく思っていました。
川口さんは、有田焼で有名な、磁器の産地の窯元のお生まれです。お祖父様は「川武陶器」という店を立ち上げ、陶磁器の販売をなさっていた方で、お父様は販売よりも製造が向いているということで「かわたけ窯」を立ち上げたのだそう。その場所を川口さんが引き継がれて、現在、そちらを工房として使われています。
川口さんは磁器の産地で窯元のお生まれながら、有田窯業大学校を卒業したのち、なんと、土ものの作家、花岡隆氏に弟子入りし、作っているものは陶器です。土のものが作り出す、柔らかな雰囲気に惹かれて始めたのだそう。
独立してから何年かは、花岡さんと同じように、粉引の作品を中心に作られていましたが、ここ5〜6年、灰釉が作り出す景色に魅了されたとのことで、粉引はほとんど姿を消し、灰釉の作品が制作のメインとなっています。
植物の灰に含まれる微量な金属質が、窯の中で炎に包まれることによって化学反応をおこし、実にさまざざまな色合いが出現し深い表情を作り出していく、それが面白いのだとか。
沢山の釉薬を作っては焼き、作っては焼き、という実験を繰り返し、作品を生み出しています。
最近は「青」を作り出す釉薬にハマっていて、今回の個展にも、さまざまな青色が浮かび上がる器をたくさん作ってくださっています。
この星雲のような青。
同じ窯に入れても、温度や酸素の量などの条件によって赤が強くでたり、でなかったり。
窯の中に入れてしまったものは、人の手のコントロールが効かないものですから、思うように表情がでなかったり、または、思った以上の景色に出会えたりするものだそう。
なかなか広い工房には、大きめのガス窯、電気窯、灯油窯と、何台もの窯があって、なかなかの窯持ちな川口さんなのですが、この灰釉の器を作り出しているのは、上の画像の灯油窯。
川口さんは、この灯油窯に薪をくべて炊くことで、薪窯で焼かれるものとは、また違った味わいのある器を作っています。それが作り出す表情の美しさは、思わず「おぉ」とうなりたくなるほど。
派手さはありませんが、すっと心に入り込む、趣のある器。
やさしく繊細な川口さん。つくりだされる器にも、やさしさが現れていますが、ときに大胆に、ときに力強く、使い手の心を揺さぶるところは流石です。
近年、お茶を習いはじめたということで、器だけでなく、茶道具、花入れや酒器、にも精力的に取り組まれています。特に花器は、奥様がお花を活けられることから、いろいろなタイプのものを作っていて、感じのいいものがたくさん。今回の個展にも、いくつもの花入を持ってきてくださるとか。
同じところに留まることなく、常に前進し、進化しつづける川口さん。
工房の横には、ギャラリーを併設したご自宅を構えられ、作り手としての視点だけでなく、使う人、見る人の視点をも扱うことで、器作りにさらなる刺激を受けられているようです。
いただいたお菓子のおいしかったこと。そしてその景色の美しさといったら。
素朴ながら、極上の味と時間をいただきました。
そんな、川口武亮さんの個展、今週末、10月30日(土)から、新店舗、外苑前の百福で開催です。
初日の始まり12時から15時までは予約制で既に満席となっておりますが、15時以降は、どなたでもご来店いただけます。
川口さんの作品を味わいに、ぜひ、百福まで足をお運びいただければと思います。
景色の美しい器に出会ってください。
ご来店おまちしております。
近年は花器にも注力なさっている川口さん。
自然が生み出す色合いを生かしたいとの思いから、
藁灰、松灰、林檎灰といった植物灰による
深く奥行きのある色合いを追求した器を目指して
制作なさっています。
百福では3年ぶりの個展。
滋味あふれる器を楽しみにいらしてください。
※新店舗(南青山2丁目)での開催となります。
※初日12時〜15時までの間は予約制とさせていただきます。(満席となりました)
10月30日(土)〜11月5日(金)
会期中無休
営業時間 12時~19時 最終日17時まで
百福
〒107-0062
東京都港区南青山2-11-6 1F
03-6447-0952