「器の裏側が好きなんです」
とその方はいいました。
「器を洗って、こう、伏せて置いたときに、あぁ、いいなぁって思うんです」
「器の裏側が好きなんです」
とその方はいいました。
器の裏側。
土ものの器は特にそうですけれども、器の裏側に、美しい景色のあるもの、けっこうあります。
器は表側にお料理が盛られますし、普段目にはいるのは表ですから、表の表情を気になさる方は多いのですけれども、実は、作り手は、この裏側の仕事にこだわりがある方も、多いです。
高台の削り方、高台まわりを土見せにするか、釉薬をかけるかどうか。
その仕上げ方によって、器全体に与える印象が変わるからですです。
その小さなディテールが、器のシルエットを左右するから。
この考え方、もともとは、お茶、茶道具の造りからきています。
その上、やはり器を手に持つという文化もあると思います。
手にしたときの、感触、風合い。
何を美しいものとするのか。何を心地よいものとするのか。
普段、何気なく手にする飯碗や小鉢などの裏側は、作り手が、とても意識して仕上げているものです。
作り手の美意識が宿るところでもあります。
「器の裏側見ていると幸せな気持ちになります」
とその方はいいました。
作り手にとって、とても嬉しい言葉に違いありません。
私も、器の裏側、すごく見てしまいます。ここが美しい作りのものが好きなのです。
ここが決まっていると、やっぱりカッコいい。
器の裏側。
少し気にして見てみてくださいね。
作り手の美意識を感じてもららえれば嬉しいです。