三島手。
土台にヘラや櫛や印を使って模様をつけて、そこに白土を埋め込む「象嵌」という技法をつかった器のことをいいます。
古くは李朝時代前期(15〜16世紀)に朝鮮半島で多く作られていた技法で、韓国では粉青沙器といわれています。
この器を当時の日本の茶人たちが愛用し、文様が伊豆国三島で版行された三嶋暦に似ていることから「三島手」「暦手」といわれ、昔から粉引同様に茶人に人気のある器でした。
さて、この三島手に魅せられているのが、今週末より個展をしてくださる八田亨さんです。
一般的によく見られる三島手は、印花文や暦文が細かくびっしりと押されたものが多いのですげども、八田さんの三島は、ざっくりと線文だけで描かれたものです。
これは八田さんが作家活動を始めた頃に出会った陶芸家の村木雄児さんの三島に強く感銘をうけたところに端を発しているのだそう。
何度となく村木さんの工房に通ったり、今年の夏には鎌倉のうつわ祥見さんで二人展を開催するなどする中で、少しずつ、ご自身にとっての三島はどういうものか、というところを形にできてきた、というのが今回の個展のメインです。
海を渡ってきた古くからある伝統的な技法だからこそ、ただ、その歴史をなぞるのではなく、その先にあるべき形を模索しているのだそう。
もともとの三島手の文様は自然の様子をデザインとして表現されたものですが、八田さんは、その逆をいきたいとか。
より自然に、よりプリミティブな形に、近づきたい。
そういうのって面白いなぁ、と私は思います。
ともすると、荒々しく感じられるかもしれません。
なのですけれども、そこに宿る言葉にはならない何某かのものが、器という形となって食卓に上る、その面白さが、作家ものを使う楽しみのひとつなのであります。
八田亨展 11月21日(土)〜28日(土)
※展示会準備のため19日(木)は17時まで、20日(金)はお休みをいただきます。